May

ファースト・カウのMayのネタバレレビュー・内容・結末

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

ある森の中で犬が骨を見つけた。しかもそれは人骨であり、1人ではなく2人並んで仰向けのまま死んでいることがわかる。
そんな冒頭で始まる本作は、西部開拓時代を生きた男性2人のひとときの友情を穏やかに映し出している。その小さな物語を包み込むのは、まだ人の手があまり入っていない原型の自然だ。

早くに親を亡くし、職を転々とするクッキー。
中国から毛皮をとりにやってきた野心家のキング・ルー。
決して牛が育つ環境でないオレゴンの地に連れてこられた一頭の牛。
夜中にミルクを盗むことを思いつき、ドーナツづくりを始めた二人の男と、一頭の牛の奇妙な関係性がそこにある。
そして冒頭に示された運命に二人は向かっていき、本作は幕を閉じる。別に劇的な展開やラストが唐突に起こるわけでない。
新しいブーツを履いたり、採取したもので料理をつくったり、その料理に人が群がってくる。そんなささやかな喜びや手触りが残ったシーンが丁寧に積み重ねられた傑作だった。
まさに“The bird a nest,the spider a web,man friendship. ”というウィリアム・ブレイクの言葉が身に染みる。

旦那と子供を道中に亡くしたその牛と自分の境遇を重ねているのか、乳を絞るクッキーの顔はやさしさに溢れていて、私はあのシーンがとても好きだ。
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