TakayukiMonji

ファースト・カウのTakayukiMonjiのレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.0
ケリー・ライカートの新作はA24、公開初日鑑賞。と言っても、製作年は2019年だからコロナを経て、やっと日本公開といった流れか。

舞台は彼女にとっての聖地オレゴン。シニカルなんだけど、いつものように静寂が大半を占める自然体な物語。彼女の作風を象徴する静寂と無駄のないゆったりとした前半は、2人の男の出会いを描いている。”ファーストカウ”と呼ばれるその地に初めて連れてこられた牛の母乳を盗んで、一攫千金を狙って、ドーナツを作り販売を始めていく。大人気を博すが、それを気に入ったのがその牛の仲介商で、盗んだものを売るという搾取の循環構造を描く。このあたりがなかなかシニカル。
後半はケリー・ライカート史上最も緊張感のある展開で、ものすごく引き込まれた。静寂との対比、緊張感のある静寂。

おそらく西部時代の後期、アメリカンドリームを掴もうとして、自業自得のように負の渦に飲み込まれる。このビターな展開は、いつものライカートの良さもあったし、ライカートの表現力の幅を見せてくれた気がする。よかった。
TakayukiMonji

TakayukiMonji