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ファースト・カウのmknsのレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.0
ケリーライカートの新作を劇場で見れる幸せ
もし一攫千金を狙って奮闘する男達というフォーカスなら最後の描き方はまた違ったものになっていたと思うが、あくまでこれはクッキーとキングルー2人の物語であるのだと想起させるエンドが本当に良かった 
かなりミクロな見せ方なのに、ちゃんとその奥に侵略と破壊の中で築かれている1800年代アメリカの実像が見えてくる 
これはミークスカットオフの時も思ったが、先住民族の言葉を訳さない演出は、彼らとこちらの距離を一層断絶し、同時に映画内の先住民以外の人間とこちらを結びつける 断絶と連携の相互作用が奇妙な居心地の悪さを生み出し、その分からなさに気を取られているうちに、気づけば焦点を少しズラされている
そしてそれは映像にも通じ、ただ日常を映しとった中に少しずつ違和感を内在させる 特に何もないのに何かがあるかもしれない、そんな不安と期待がじわじわと胸を侵略する
こんな風に人間を撮し取れる監督は彼女以外にまだ出会った事がない

そうだ、キングルーの英語だが、1番最初より中盤の方が台詞の訛りが若干無くなっているように聞こえ、これが意図的なら細部まで綿密に作り込まれているなと感動した
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