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ファースト・カウのthornのネタバレレビュー・内容・結末

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

どんなにつまらない映画でも寝たことがない私が、眠くなるのは非常にめずらしい。ふだんは映画で眠くなることすらない。年末の仕事の後で疲れはあるものの、それほど珍しいことなのだ(でも寝てませんよ)。ぜんぜん画面に興味を惹かれないんだよね。

見た目がそれらしく作られてはいるものの、人物造形のうすぺらさが目立ってしまっていた。スコーンは美味しそうだったけど。なぜこんな大昔にあんなに英語を流暢に話すインテリ層の中国人がカナダ?(前知識皆無で見てます)の山奥に来たのか。頭悪すぎるし、もっと稼ぎようがあるような。それに日系人にしか見えないんですよね(彼は中国人らしい。しかし中国系オーストラリア人なんですね。アメリカ映画の最近の純血主義?ってなんか滑稽って思わん?オーストラリア人だよ?血ってそんなに重要?ズレてる気がする)。また、二人の友情がテーマらしいけども、脚本がまずいのか友情の深まりを感じない。結構説明セリフ的なのが多くて冷める。お菓子作りするカントリーアメリカンの彼はまるでオッベルと象よろしく中国人に搾取されるのであり、これがリアリズム?このお話をこの時代にこの地域設定でつくる意義が感じられない。さすがに牛乳ないとスコーン作れないしさ、牛一頭しかいないんだから牛乳盗んでるの丸わかりでしょ。これで2時間30分くらいだらだらずっと引っ張るのはさすがにやりすぎ。英国紳士と観客を舐めすぎである。狭い地域の中で牛乳を盗み続ける地味な話に意味のない時間をかけすぎだ。ミニシアター系の形を借りたファッションショーみたいだ(カナダのロックバンド、The Bandのジャケットアートの世界、ドイツのブランド、フランクリーダーっぽいよね。The Bandはロックバンドだからいいのだし、フランクリーダーはファッションだから良いのだ)。複数の国籍民族を同時に撮りたいがための設定としか感じられなかった。なにしろ主演二人の演技が現代人が話してるようにしか見えないんだよね。お茶会?のシーンにおける、インディアン女性ふたり(うち一人はリリグラッドストーン)の華やかやさがとてもすてきだった。この二人をもっと見たかったなぁ。でもさあ、あんな一角の立場のある英国紳士が自分で紅茶淹れますかね?ふつう給仕に淹れさせるんじゃないの?給仕くらい祖国から連れてくるでしょ。英国人が新しいもの好きでインディアンを娶ってるのはまだ百歩譲るけどさ、みんな疑問に思わないのかな?細かいとこに違和感が目白押しであり、なかなかの残念映画。これを褒めてる映画人は映画ちゃんと観てるか甚だ疑問である。

この作品のテーマと、宮沢賢治のオッペルと象のテーマには関連性がありそう。でもだからどうした。映画として面白くないと何の意味もありません。。この映画みる時間あったら青空文庫でオッペルと象読んだ方がいい。

テーマに同一性はありながらも、宮沢賢治のほうがプリミティブですよね。原始的で荒々しい。童話なのに怖い。救いがないし容赦がない。1926年作の児童文学のほうが、生々しく迫ってくる。この作品のそれはシュガーコーティングされてる感じ。それこそドーナツのように。そこがどうも鼻につくのだ。スノッブ極まりない。牛と犬とほかいろんな動物たちの可愛さに免じて2点。
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