ハマジン

ファースト・カウのハマジンのレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
3.5
画面をゆっくりと横切る川船の冒頭ショットで「あれ?ジェームズ・ベニングの映画見にきたんだっけ?」と一瞬錯覚(カット尻の鋭利さでライカート作品と確信)。予想以上にサスペンスとしてよくできた映画で、特に、牝牛の持ち主である英国紳士気どりのスノッブの仲買人(トビー・ジョーンズ)が雇っている先住民の召使が、屋敷のロウソクを1つ1つ消していくさまを左右の往復トラックで静かに追っていくショットのはりつめた緊張感には、思わず息をひそめてしまった。
薪割りを窓枠にとらえての掃き掃除のショット。素揚げのドーナツは売り出すうちにはちみつが塗られシナモンがかけられ、しまいには仲買人の依頼でブルーベリー入りのクラフティまで作られる。掃除、料理、繕い物など、開拓集落生活の細部をさりげなくもじっくりと映すタイプの西部劇。一周回ってもはや古典に返ってるようにも思う。
あと、牛や犬の実在感はもちろん、仲買人の家で飼われている猫の絶妙な感じの悪さがとてもよかった。主役2人のミルク泥棒が露見する原因が、真夜中急に外に飛び出したこの猫のせい、という偶発性もいい。
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