Blake1757

ファースト・カウのBlake1757のレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.0
僕はわりと「森の映画」が好きなのだが、これも広い意味で「森の映画」にはあてはまりそうだけれど、「美しい森」でも「神秘の森」でも「恐ろしい森」でもなく、強いて言えば「日常の森」を舞台にした映画だった。
フィックスの多い落ち着いたキャメラは、過度に感情をかき立てることなく、観客を物語に引き込む。そこに、川、舟、牛などの画が印象的にさしこまれていく。夜の場面は徹底して暗く描かれ、かろうじて人影が分かるくらいだが、しかし環境音だけでしっかり“見せ“てくれる。
いわゆるバディものでもあるわけだが、描き方は静謐で、二人の口からは最低限のことしか語られない。設定もキャラクターも全く異なるが、僕はこの二人を「ネガポジ反転させた(寡黙で弱っちい)ブッチとサンダンス」のように感じた。
アバンタイトルからの展開にはじめは意表を突かれたが、終わってみるとなるほどと納得感がある。
全編を通じて、「よい映画を観た」という満足感の高い作品だった。

(そう言えば冒頭で「The bird a nest, the spider a web, man friendship.」というウィリアム・ブレイクの警句が映し出されるのだけど、僕のハンドル名のBlakeは、このブレイクです。)
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