CHICORITA主任

ファースト・カウのCHICORITA主任のレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.2
アメリカのインディペンデント映画界で最も高い評価を受けているというケリー・ライカート監督作。なんと本作が日本での初劇場公開とのこと。

1820年代のアメリカ開拓期を舞台に、一頭の牛にまつわる事件と、2人の男の友情を描いた作品。

冒頭で登場する2体の遺骨から、この物語の行く末が暗示されサスペンス的緊張感が漂いつつ、映画の進行自体は非常にゆったりしていて優しい雰囲気。牛乳を盗んで甘いドーナツを作り、それを売って稼ぐという手口もどこか能天気で微笑ましい。
盗みが発覚してからの終盤はさすがに緊迫感がありましたが、二人の明確な結末をあえて描かないことで、非常に切れ味の鋭いラストを演出しており素晴らしかったです。

愛とは違う、でもたぶんそれ以上に離れ難いなにか、友情。人生なんとなく上手くいかない大の男2人が寄り添い暮らす姿と、それを見守る自然と動物たちの時に優しく時に厳しい眼差しに、生きることの豊かさを感じる一本でした。

ワンシーンのみの登場ですが、この作品をきっかけに『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』に出演したという、リリー・グラッドストーンにも要注目。

緩やかで静謐な作品だからこそ、ぜひとも映画館で味わってもらいたい一本です。
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