あべ

ファースト・カウのあべのネタバレレビュー・内容・結末

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

今まで見たどんな西部劇よりも生きた西部の雰囲気を感じた。それは画面の中の生活が息づいていたからかも。
キノコを摘み火を起こし箒で掃く...など。穏やかに流れる時間の中カメラに捉えられ続ける、なんてことのない一連の動作に目を奪われる。画面の中に確かに彼らが生きているように感じられる。
ケリー・ライカート初めてだったけど良かった...。

今の時代よりも更にひどくマチズモが支配する、男らしさを内面化しなければ生きられない荒野の世界で培われる珠玉の友情。
ゴールドラッシュはまだ起きておらず、調べたら南北戦争すら始まっていない時代なんだな。
牛がやってくるシーンは、先住民たちの目線も相まって素晴らしかった。

劇中人物らの言動から示唆される、この"後"の地獄のようなアメリカ開拓史を思うともうたまらない。現代に地続きである蹂躙の歴史を知っているからこそ、国も文化も性格も違う彼らが育み拠り所としていく友情がとてつもなく尊い。

ラスト、ここで終わったら最高だなと思ってたところでエンドロールに入ったのでとても嬉しかった。撃たれて死んでしまうんではないかと不安だったけど、そういう映画に毒されてたな。
この映画に人の命が奪われる瞬間は不要なんだ。主題はそこにはない。
あべ

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