ツクヨミ

ファースト・カウのツクヨミのレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
3.7
牧歌的リアリズムで包む栄枯盛衰の妙。
ケリー・ライカート監督作品。最新作じゃないけどライカート監督の未公開作品が上映してると聞いて見に行ってみた。
まずオープニング、固定カメラで水上を左から右へ流れる貨物船を眺めるだけでうっとりしてしまう。そして"ウェンディ&ルーシー"的な女性と犬がたまたま見つけたものが作品の結末を示唆する感じがちょっとエモい。わりかし固定カメラでゆったりした自然を映すショットの連続がライカート味たっぷりで良いなぁと久々に感じた。
まあ本編はオープニングから一転し西部開拓時代のアリゾナでたまたま出会った白人と中国人の友情物語になっている、毛皮が儲かる噂を聞き集まった人々の中で彼らは独自の一攫千金を試みるというチャップリンの"黄金狂時代"を感じさせる話が進行していく。そこもわりかし小さなサクセスストーリーのように盗んだミルクをうまいことドーナツにして儲けるクライムストーリーでなんか面白いし、またドーナツが美味しそう。
だが後半はそんな軽犯罪がバレそうになったりしてけっこうスリリングな展開がなされてゆく、クライムストーリーとしては確かにそうなるよなという話なんだがスローモーションを使った美ショットがまた牧歌的でライカートしてるなぁって感じが残ってた。西部開拓時代のクライムストーリーのはずがやはり作家性の妙が効いてる、でもライカート作品の中でもわりかし物語があって見やすくはなってるんじゃないかな本作。ラストとオープニングの繋げ方もなかなかにグッド。
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