とりん

ファースト・カウのとりんのレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.0
2024年3本目(映画館1本目)

昨年初頭から初めて作品に触れてそれ以来ずっと追ってきたケリー・ライカート監督、今作でついに映画館で観れた。
しっかり全国公開したのもおそらく今回が初、アメリカでは2020年公開作品だけれども遅れながらしっかり公開に至れたのは、おそらく日本でも話題となっているA24が製作に絡んでるからか。
過去作をいくつか観てきたけど、どの良さも本作にはあったなと感じたし、何よりスクリーンで観るとまた違うなと思えた。

相変わらず舞台設定などの説明などは一切なくて、画面から読み取ってくださいの内容ではあるけれど、これまでよりかなり汲み取りやすい。
時代設定としては西部開拓時代、アメリカンドリームを目指した男たちの友情を描いた物語。
男2人の友情の話となると「オールド・ジョイ」を思い出すが、それよりももっとストレートでお互い思いやる美しさもある友情が描かれる。

序盤は少しゆったりはしているものの、舞台が村に映ってからはしっかり物語が展開していく。他作品より起伏的な意味でも自分が観たこれまでの監督作品の中でも一番あった気がする。
特に終盤は少し手に汗握るハラハラさもある。

序盤はどうタイトルと絡めてくるのかなと思ったけど、なるほどそんな感じかと思ったら、中盤まさかの料理ムービーになるとは思わなかった。ドーナツが美味しそうだった。
これまで同様映像回しや美しさは随一だし、スクリーンに引き込まれた。

主演2人の俳優は全然知らなかったけど、すごい良い演技でした。
ラストの幕切も良かった。正直そう繋がるのは気づいてしまったけど、持って行き方はさすが。ちゃんと友情の美しさも最後まで見せてくれたし。友情を描く作品はあるけど、1頭の牛を中心に、ドーナツで一攫千金を狙い夢見るというユニークすぎる物語。
音楽も少ないけれどかなり秀逸。
好きな人は好きだろうなというのはこれまでの監督作品と同じだけど、個人的には一番ハマったかも。
これからもライカート監督作品は追って行きたい。
とりん

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