よしまる

ジャンゴ 繋がれざる者のよしまるのレビュー・感想・評価

ジャンゴ 繋がれざる者(2012年製作の映画)
3.0
 キルビル以降のタランティーノにどうも興味が持てなくてようやく鑑賞。ちなみにジャッキーブラウンまでの3作は超がつくほどの大好物というのはお伝えしておく。
 で。

 年齢のせいなのか、性格なのか、とにかく復讐劇というものに1ミリも快感を覚えない。これにはマイッタw

 歯医者でドイツ人のバウンティハンターが、馬に乗った黒人を連れて練り歩くという人を食ったような設定がまず面白い。というかこんな映画見たことないw
 タラちゃん独特の台詞回し、どこかで見たようなキメのショット。殺しに至るプロセスなんかはまあいつも通りだけど、ここに奴隷制度の正視にたえない所業をぶっ込んでくるのがこの時代のタラ節だ。

 悪役は初めてというディカプリオ(そんなことないと思うんやけどなー)。およそ考えられる最大級の悪辣ぶり、しかしただ悪戯に当時の差別、人種として劣るだの骨相学だのという非常識極まりない南部の白人の価値観を持った悪役を丁寧に演じているだけなので、キレイなお顔とのアンバランスも相まって魅力には欠ける。
たぶんそのミスマッチ感を狙ったのだと理解はできるのだけれど、騙されてぶち切れるだけのお坊ちゃんを楽しむ感性がボクには備わっていなかった。

 加えてジャンゴ。南部一の早撃ち、饒舌な立ち振る舞い、その根拠が希薄すぎて面白みに欠けた。虐げられた過酷な運命を耐え忍び、黒人の同士を見殺しにしてまで勝ち得た自由が単なる皆殺しって、そんなものにどう共感しろというのだろうか。歴史を改竄してまで、立ち上がった黒人がロクなバックボーンも描かれず暴れ回るのが痛快だとは。人間の尊厳を問いただしたいのでもなく、ただ復讐を遂げてヤッホーというだけであるならば、やってることは白人の農園主と何ら変わらないアホだ。

 キルビルやマチェーテ、あるいはジョン・ウィックのように、何か知らんけどバシバシ人殺して楽しいやん!みたいに吹っ切れてるならともかく、奴隷制度に切り込んで何かを描きたかったのだとするならば、たとえこれはただの問題提起、きっかけに過ぎないのですと言うにしてもあまりにお粗末。
 西部劇のヒーローが人種差別に蓋をした能天気な作り物というのは確かだけれど、かといってこんな回収の仕方をもってしてこういう映画もまた楽しという理屈は、ボクには理解し難いものだった。
 総じて、歯医者以外の人物描写がしこたま弱い、形ばかりで骨のない映画。これもまたタランティーノ流というのなら、至極残念。