短編のエッジの鋭さが鮮明に残っているので、どうしてもヌルさが否めない。
ブライオンはジュリーと出逢い覚醒するのだが、要となる二人の感情が伝わってこない。娘たちを交えた家族の情景もそつなく描いているが、何かが欠けている感じ。
比較する訳じゃないが、リーダー夫妻を演じたビル・キャンプとヴェラ・ファーミガが上手い。言葉にできない部分での演技力を感じる。
ホームレス少年ギャビンの存在は良かった。ブライオンも同じように拾われて、居場所と白人至上主義を与えられたのだろう。「子犬の時から手なずけてる」さり気ないそんなセリフも効いている。
この手口は世界共通で、中東が舞台の『シリアナ』でもイスラム過激派が若者を誘っていた。あちらは自爆テロ戦士を育てるためだが。
反ヘイト団体のダリルが「怒りでは解決しない」と少年に話すシーンは、停止してセリフをじっくり読んだ。監督が最も伝えたいメッセージに思えた。