骨折り損

SKIN/スキンの骨折り損のレビュー・感想・評価

SKIN/スキン(2019年製作の映画)
3.7
短編とはまた違う物語になっていたのは割と驚いた。

違う話になっていて、メッセージもかなり変わっていたように感じたので、短編映画の長編映画化ってなんだろうなぁと改めて考えた。なんかもう、タイトル別で良くね?っていう。

短編よりも長編の方が良かった例ってかなり稀有な気がするけれど、『セッション』の長編化はその珍しい一例だった。今作は、まぁ自分の中では短編の方がいい例に分類された。

うーん、この映画は評価が難しい。やりたいことは分かるし、生まれた環境と自分の正義との間で揺れる葛藤とか、描きたいテーマもはっきりとしている。それなりに楽しめた。でも、こと差別に関しては過激派の白人至上主義者の正義にあまりに共感しづらく、彼らなりの葛藤みたいなところがどうしても理解出来なかった。もちろんこの映画は主人公自身の葛藤であって、彼は過激派のファミリーに疑問を感じている側なので、レイシストの考えに歩み寄らなくても物語は成立する。ただ、どんな物語も悪とされるキャラクターに、その人なりの正義が垣間見えることで観客に考える機会が与えられると思う。その点において、圧倒的に暴力的なレイシストに悪以外の側面を感じられなかったのは、自分としては映画の深度に直結してしまった。

やはりどんな映画でも、どんな行動原理でも、その人なりの正義が腑に落ちたうえで自分がどう思うかを考えたい。どう足掻いても擁護できない行動には、物語としての面白みを感じにくい。理解出来なさすぎて面白い場合ももちろんあるが、レイシストの葛藤に興味も何も持てなかった。主人公の葛藤は理解できるんだが、引き戻す側のファミリーが割と一辺倒な描かれ方をしていて、主人公が葛藤する理由が恐怖と罪悪感しかないように見えた。そこにファミリーが尾を引く理由がもう少し他にあれば良かったかもしれない。

もちろん差別に答えなんてないことは分かっているが、それにしてもここまで差別問題に正面切って挑んだ作品なのだから、クライマックスももっと思い切って欲しかったという思いは残った。

やっぱり主人公に幸せになって欲しいと思えなかった時点で、その映画は厳しいんだよな。
骨折り損

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