るるびっち

返校 言葉が消えた日のるるびっちのレビュー・感想・評価

返校 言葉が消えた日(2019年製作の映画)
3.6
ゲームも歴史もよく知らないので、ホラー映画としてのみ考察。
歴史をホラーに混ぜるのが新しいと思った。
そもそもお化けは、人の心が生み出すものだろう。
死者に対する恐怖が、霊魂の存在を作るのだ。
思想統制され、本は焼かれ自由に読書できない時代。
自由を束縛する恐怖政治というのも、ひとつのお化けであろう。
学校から脱出できないというのは、そのまま独裁体制から逃げ出せないことを表している。
人々を追う化物は、暴走した権力だ。
そうした時代の閉塞感を、閉じられた学校という空間で表現している。

恐怖を生み出すのは強者とは限らない。
密告社会は政権が作り出すものだが、国民が加担しなければ成立しない。
ひとりひとりの国民は弱者でも、密告に加担した瞬間に恐怖を生み出す加害者になる。
ここでは自由を求める者と、愛を求める者が争う。
愛は他人の自由を奪う。
純粋な恋心がひとつの恐怖を生む。
これもお化けだろう。
嫉妬や独占欲という心の闇が問題なのか。
むしろ純粋な愛が、お化けを生んだのではないか。その方が怖い。
一番のお化けは霊魂でも体制でもなく、自分の心の中にあるのだ。

所で、誰よりも心を理解していたのが鬼教官というのが笑える。
先生よりも、よっぽど乙女心に精通していたからこそ利用できたのだ。
ナンパ指南書を書けばベストセラーになるのではないか。
勿論、発禁処分だが。
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