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返校 言葉が消えた日のkazuoのレビュー・感想・評価

返校 言葉が消えた日(2019年製作の映画)
4.5
「自由が罪となる世界で僕らは生きていた」

映画の舞台となった1962年の台湾は白色テロの時代。白色テロとは1947年から始まった国民党による反体制派に対する政治的弾圧で、戒厳令が解かれる1987年まで続いた。
言論や思想に自由がなく、書籍にも規制がかかるなど読書の自由もない。
そして国民党に反抗、もしくはその可能性のあるものがこの白色テロの時代に14万名投獄され、3,4千人が処刑されている。

国民党は反体制派を摘発するために国民に密告、相互監視させる。

10代は未熟であり、純粋であり、残酷でもある。そんな若者の純粋であり残酷でもある行為に白色テロの時代背景がからみ物語は悲劇を生んでゆく。

生き続ける事、そして伝える事。その大切さを物語は語りかける。

私は無神論者で反神秘主義である。故に霊は不在である、という前提の考え。そんな私がこの映画のラストのシークエンスを観て何故霊が"存在"するのか解った気がする。霊とはつまり死者の、そして残された生者の想いである。

私はまもなく退場する。しかしやり残したことが沢山ある。だから"生き続ける"者にそれを託したい気持ちが強くある。そんな心情に映画の後半はシンクロした。
故にこの映画は、私にとっては思い入れの強い傑作である。
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