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返校 言葉が消えた日のumihayatoのレビュー・感想・評価

返校 言葉が消えた日(2019年製作の映画)
5.0
まさかの傑作。
前半のゲームっぽいホラーパートの映像のチャチさには目を瞑るとしても
(デザインはとても好きだったので、こういう作品にはもっと予算がついてCGやセットのクオリティが上がって欲しいし、売り方を間違えないでほしい)

台湾の1947年から40年にも続いた恐怖政治下での、思想言論統制・密告相互監視社会。

その中での恐怖や不安、罪悪感を、「悪夢」という暗喩の形で描き、現実での人々の行動や感情や嘘ともリンクさせながら描いていく展開は正直、これまでのディストピア映画とはちがう全く新しい体験でびっくりした。

思春期である高校生が主人公なのも大事な設定だと思う。
密告が憎い人間(本作では嫉妬)を消す最終兵器だという事をよりリアルにより身近に描くことに成功しているし、その罪悪感により若者が自ら命を絶つことも真っ向から描いている。
こう言う社会は、あったかもしれない当たり前の楽しく苦しい若さの幸せを完膚なきまでにぶち壊す。


何よりラストの"「自由」という思想の為に生き残る"事の重要性と辛さ、未来という可能性をしっかり提示出来たのも、主人公が若者でなければできなかったことだろう。

"自由“という思想を捨てない生き方を。
NO抑圧。NO統制。
国家権力にNO。
"自由"を書き記す本を。鳴らす音楽を。
描く絵を。繋げる言葉や表現を守れ。
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