漫画描きのたまご

返校 言葉が消えた日の漫画描きのたまごのネタバレレビュー・内容・結末

返校 言葉が消えた日(2019年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

原作ゲームプレイ済み。

1947年から40年続き、3000人以上の処刑被害者を出した厳戒令化での、知識への渇望が引き起こす悲劇と青春の話。

男学生な主人公ウェイと女学生な主人公ファン・レイシンといて、原作だと殆どファン目線から語られる物語ゆえに分かりづらかった時代背景も、ウェイ目線からの感情を通してわかる様になっており、原作の欠点を完全に補っていてよかった。

この時代全体への解像度をウェイが、さらに深い個人的なこの時代での家族間の闇や先生と生徒間の交流をファンが担い合い隙がない作りになっている。

一人一人のキャラクター…とくに女学生主人公ファンが恋心を抱くチャン先生の深掘りをかなり丁寧に描いてくれたのは良かった。

バイ教官という時代が生んだ悪役ポジションの男も、無機質気味の表情により存在感があったり、

イン先生という女性の先生が、嫉妬を膨らませるには充分な描写で描かれていたり、原作をやったことがある人間にはたまらない作品だったと思う。

原作をやったことがない人間2人と一緒に見たんだけど面白いと言っていたので、グロ描写が多い分番人には勧められないが…体制や台湾の歴史を知りたい人間にはかなりオススメしたい映画だと思う。


かなり救いがない話なのに、廃校となった学校の教室に光が満ちながらファンが呪縛から解かれたであろう最後のシーンは、不思議と爽やかでかなり余韻がある。このシーンや途中途中の美術的に大胆な映像のおかげで暗い話ながら面白いと言い切れる作品になったと思う。

それでも分かりにくい部分はあると思うので点数は0.1引くけれど、限りなく満点に近い思いで好きです。