藻尾井逞育

返校 言葉が消えた日の藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

返校 言葉が消えた日(2019年製作の映画)
4.0
「人間は生まれつき自由であるべきだ。自由が罪になる世界で僕らは生きてた」
「生きてれば可能だ。誰かが生き続け、すべて覚えていてほしい」
「今世では縁がなかった。来世で会おう」

1960年代、独裁政権のもと国民のあらゆる自由が制限されていた台湾。夜の学校に閉じ込められ、不可思議な現象に遭遇する2人の生徒は、やがてある恐ろしい真実にたどりつく。

台湾で大ヒットを記録したダークミステリーで、同名ホラーゲームを実写化したそうです。ゲームの方は未体験なので、映画のみの感想になります。物語は悪夢、密告者、生きている人の3章で構成されますが、全体を通しても悪夢パートと現実パートに分かれ、さらに現実パートも過去と現在とその後に分かれるという複雑な構造になってます。また悪夢パートも、最初はファンの視点で、途中からウェイの視点で描かれているので、最初理解しづらかったです。でも、謎解きは丁寧に説明しており、無垢な恋心とちょっとした誤解による嫉妬が、あんなにも悲しい結末を引き起こしたと思うと切なくなります。
1947年のニ・ニ八事件から始まり、1987年の戒厳令解除、1992年の台湾民主化、言論の自由を勝ち取るまで続いた白色テロ時代がテーマだそうです。私たちのすぐ近くで、私たちと同じ価値観を持っていると思っていた人たちも、ごく最近まで自由を奪われていた事実を改めて認識しました。同時に自由を勝ち取った今は当時のことも自由に語れるようになったことに、苦労をして自由を引き継いでこられた多くの方々に対して頭が下がります。
あの時代の息詰まる空気そのものだけで、異形のものが登場しなくても十分ホラーです⁈返校、学校に戻ってきたのは、ウェイ、そしてファン?

2024/04/03
台湾加油!