Mikiyoshi1986

罪と罰のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

罪と罰(1983年製作の映画)
4.2
7月13日は44歳の若さでこの世を去ったフィンランドの俳優マッティ・ペロンパーの命日。
生きていれば今年で66歳に。

カウリスマキ監督がドストエフスキー不朽の名作「罪と罰」を長編デビュー作として映画化し、
その初期時代から約10年間、カウリスマキ作品にて圧倒的な異彩を放ち続けたペロンパー。

ちなみに7月13日という日付は何の因果か、本編の主人公ラヒカイネンが凶行に及んだ日でもあります。

若干26歳のカウリスマキが現代のヘルシンキを舞台に「罪と罰」を描いた本作は、
孤独な主人公、貧困と犯罪、下層社会で芽生える愛、無表情で無機質な人々、色彩、音楽など、まさしく以後のスタイルを確立する原点に相当し、フィンランドにおける現代社会のプロレタリアート作品とも云えます。

かつてフランスの監督ロベール・ブレッソンも「罪と罰」を現代に置き換え「スリ」を制作したように、
シネマトグラフとしての可能性を大いに携えている「罪と罰」。

また本編の前半のプロットは、原作以上にメルヴィル「サムライ」へのオマージュとも取れる酷似性が見てとれます。

そんな「罪と罰」という普通に考えたら辛気臭くなっちゃう雰囲気を打開してくれる人物こそ、我らがペロンパーなわけです!
ラヒカイネンの仕事仲間として登場し、スープのくだりや英語のくだりや三輪車のくだりなど、とにかくペロンパーは毎度ツボ!

ペロンパーが醸し出す緩衝材のような独特の空気はやはり唯一無二であり、彼の魅力は今もなお色褪せることがありません。
それ故、彼の喪失は以後のカウリスマキ作品の印象を大きく左右するほど重要な存在になっていたのでした。
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