Yui

プリズン・サークルのYuiのレビュー・感想・評価

プリズン・サークル(2019年製作の映画)
4.4
「島根あさひ社会復帰促進センター」は犯罪傾向の進んでいない男子2000人を収容出来るPFI手法を用いた民間委託の刑務所。

そこで行われる「セラピューティック・コミュニティ(回復共同体)」は日本で唯一取り入れられている更生法で、そのコミュニティの中で受刑者達はなぜここにいて、どう償って行くのかを幼い頃に経験した虐待、いじめ、貧困、差別などの記憶から、自身の痛みや悲しみ、怒りと向き合い、それを表現する言葉を取得して行く…。


ずっと観たかったドキュメンタリー。
上映映画館も少なく、なかなか近くでやっていなくてもう観れないかな~と半ば諦めていたんですが、ありがとうシアターイメージフォーラムのアンコール上映!


やっぱり観れて良かったと思う内容でした。

自分の行いを振り返って、感情や動機を理解し、言葉にする事って大切だけど難しい。

怒りや悲しみ、色んな感情の根っこにはやはり幼少期や家庭環境が関係していて、それってきっといくつになっても変わらないし、こういうコミュニティやカウンセリングでもない限り、深く自分自身と向き合う事ってなかなか出来ない。1人じゃないっていうのも大きいと思う。
人から指摘されるのはキツイけど、その痛みを乗り越えるのも1人じゃないから頑張れるのかな。刑務所だと逃げ場もないし、考える時間はたくさんあるし。

自分の感情、特に怒りの部分を言語化するのってとても難しい。なんで怒っているのか、悲しいのか、なんで悲しいのか…深堀りして自分と向き合って突き詰めて行かなければいけないし、ぴったりの言葉が見付からない事もある。

それが幼い頃の記憶・感情となると、奥の方に蓋をしてしまったり、心を守る為に書き換えてしまったり、歪めてしまったりと色々だから尚更難しい…。

鑑賞してからかなり時間が経ってしまったけど、窃盗をしていた方が「なんで取ったらいけないのかが分からない」「自分が取られても何とも思わないまた取れば良い」みたいな事を言ってたのが凄く記憶に残ってる。

これだけ聞くと、は?ってなるんだけど、この人は幼少期にお腹が空いて、万引きをしてご飯を食べないと生きていけない生活を強いられていたんだよね。衣食住揃った家庭環境で育ててもらえなかったから、それが当たり前だったんだよね。
そんな幼少期を過ごした人に正論をぶつける事こそ、は?だと思うし、でも大人になったら許されないから、こういう更生法は必要だよなぁと思った。

犯罪を繰り返さない事が、本人の心を救う事にもなればとても素晴らしい事だと思う。
働く事、恋愛や家庭を持つ事、人と関わる事、犯罪を犯してなくても様々な事に悩みながら生きづらい人は多いけど、人に助けられて人を助けて関わって行く経験の積み重ねは、根っこを変える自信になるし、その後の人生の大きな柱になってくれると感じた。

綺麗事では片付けられない事こそ、誰かの手が必要。
他人事じゃなくて、これが自分だった可能性は十分にあるんだよね。

希望の光と、根深さを感じた作品でした。



今頃2023年のラストムービーの投稿だったけど、2023年は今までで一番映画を観られてない年だったな~。
100本しか観てないとか信じられない🙄
でもそれ以外で充実した年だったから💮
2024年はもう少し映画観たいです😌✨


2023-100
Yui

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