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ザ・テリブルのhorahukiのレビュー・感想・評価

ザ・テリブル(1996年製作の映画)
3.5
『恐怖と戦慄の美女』の約20年ぶりの続編。

圧倒的なインパクトを誇った伝説的人形ホラー『アメリア』の続編的位置づけとなる『殺人者』を含む3話からなるホラーオムニバスです。


1話目『墓場のネズミ』
金持ちジジイの若妻は浮気相手の提案でジジイ殺害を計画。そんで殺してみたは良いけれど、ジジイの財産はゼロ…。んなわけないやろと考えていると、ジジイが大事なものは肌身離さず持っていたことを思い出す。二人はジジイの棺を掘り返すが…。

タイトル通り、墓場は巨大ネズミの巣窟だった系ネズミホラー。棺を掘り返すまでの前振りがやたらと長い歪な構成だけど、埋葬された死体を貪り食う巨大ネズミさんたちのどう猛さは必見。地中に埋められた棺から棺へと蟻の巣のような巣穴を張り巡らせ、入り口を見失えば、行きつく先は全て棺という「死」に辿り着く地獄。それはまるで本作の主人公のよう。最初はジジイの殺害にノリ気ではなかったものの、浮気相手に唆され、足を踏み入れれば崩壊という出口しか存在しない。崩壊のカタルシスが気持ち良いナイスな短編。


2話目『ボビー』
事故で息子ボビーを亡くした母親。夫が出張で留守の時に死んだ者をよみがえらす儀式を行う。すると雷鳴轟く中、家のドアをノックする音が…。

『猿の手』の変化球的なお話しかと思わせつつも、二転三転させていく展開が楽しい子供怖い系ホラー。停電の中での命がけのかくれんぼ。武器を手に持ち震えながら隠れるという襲われる側視点特有の恐怖の中に襲う側の視点もミックスさせ、殺人鬼が迫りくるという単一の演出に「殺されてしまう恐怖」と「殺してしまう恐怖」を併存させるのが面白い。親子の関係性をオチに持ってくる本作は、読みやすい物語ではあるけど、崩壊の入り口を物語外の早い段階に位置付けさせることで、その過程を楽しむというよりかは、崩壊を受け入れられない人間の弱さ・滑稽さを楽しむお話でした。


3話目『殺人者』
母親と娘が惨殺された部屋のレンジで黒焦げになっていた謎のズーニー人形。鑑定のために博物館の研究室に運び込まれた人形。鑑定にあたっていた博士が食事に行き戻ると、人形が消えていて…。

『アメリア』の続編的位置づけとなる人形ホラー。レンチンされたズーニー人形と女性の死体という前作を思わせるスタートを切りつつも、状況が異なるので前作とは時間的な隔たりがありそう。やってることは変わらないので、シンプルにインパクトがあった『アメリア』よりは劣るけど、人を切りつけることに全精力を注ぎこんで襲い掛かってくるズーニーさんの情け容赦ない攻勢は健在で嬉しかった。1話目→2話目からの流れで考えるとオムニバスとしての空気感を断ち切ってしまっている異質な作品ですが、完全に3話目ありきの本作なので、浮いてるとか言えないのが辛いところ。ちなみにズーニー人形はジャケのやつです。
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