織田

水曜日が消えたの織田のネタバレレビュー・内容・結末

水曜日が消えた(2020年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

好きな映画でした。割と偏愛の域に入るかもしれません。笑

月火水木金土日と7人の僕(中村倫也)がいて、七日間それぞれの「曜日」にそれぞれの趣味やライフスタイルがある。一方で一人一人が生活できるのは、知り得るのは自分の「曜日」だけでした。

そこにはまぁ障壁の多いこと多いこと。
「僕」(斉藤数馬=中村倫也)側もそうだし、他者からしてみたら月曜の彼と木曜の彼が"別人"だなんて思ってもないわけなので尚更です。月〜日を通じたスパンで「斉藤数馬」と接するのは一ノ瀬さんときたろう先生だけ。
労働も固定曜日&週一回の勤務じゃない限り不可です。記憶の引き継ぎができないんだからそうなりますよね。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「俺は月曜日に消えて欲しいけどね」

『水曜日が消えた』が公開された当時、題名を見た友人は笑いながら言いました。
もちろん作内の月曜日くんに対してではなくて、月ー金で働く労働者として休み明けの月曜という存在が憂鬱という意です。逆に土曜や日曜に対する彼の感情はきっとポジティブでしょう。

翻ってこの「○曜日」を意識する作業が、本作の斉藤数馬×7だとどうだったんでしょうか。彼らはそれぞれ「○曜日の世界しか知らない」状況。「火曜日」は図書館が開いている他の曜日への憧れを口にします。役所や銀行、美容院、病院、不動産屋…世の中の多くには定休日が存在し、他の「曜日」たちも経験したことがないものがそれぞれあるはずです。

これって(私もそうなんですが)シフト制・不定休の業種で働いている人にとっては結構実感がわくと思うんですよね。月曜から日曜日まで全ての曜日を休日として過ごしたことがあって、平日休みゆえのメリットもデメリットも知っています。
そこで、次の休日は何しよう?と考える上で結構大きな割合を占めるのは「何曜日だから」という理由なんですね。TOHOウェンズデーなんて何回利用したことか。先述したように定休日からの消去法で決めることも往々にしてあります。

不定休の人は、何曜日かを日々意識する点では個々の斉藤数馬たちと近く、一方で何曜日の世界でも知っている部分では対極と言えるのではないでしょうか?だからか、自分は作内の設定にすんなりと入りました。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

各曜日が付箋や日報でコミュニケーションを取る"引き継ぎ"も個人的には凄く身近な作業。他の人はどういうこと書いてるのかな…って引き継ぎノートを読み返すのとかまじで好きでした。笑

今の時代はチャットツールが一般的な中、作品内ではペーパーレスに逆行するかのような紙での伝言形式。付箋は効率悪いのではと思いつつも、七曜日の綴る文字はそれぞれのキャラクターを確かに示していて、もう字を読んでるだけで楽しくなります。この"手書き"も斉藤数馬×7の魅力を膨らませてくれた要素でした。

映画の大半は「火曜日」視点であるものの、至る所から醸し出される各人の個性。火曜へバトンを渡す「月曜日」のものは特に強烈でした。そして終盤に可視化される月水木金土日たちが思っていた以上に濃い。
もっともっともっと見せてほしかったし、正直全然足りない。笑

彼らをもっと知りたいと掻き立ててくれる映画でした。楽しかったです。
織田

織田