垂直落下式サミング

心霊 旧日本軍の病院の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

心霊 旧日本軍の病院(1996年製作の映画)
3.9
①「旧日本軍の病院」
病院の屋上でパジャマに上着を羽織った稲川淳二が、こちらに話しかけてくる。世にも奇妙な物語のスタイル。そして、病院は怖いぜってはなしをし終えた稲川淳二は画面端にフレームアウトし、車イスをおす看護師と車イスに乗る老婆の会話へとシームレスに移動する。
お婆ちゃん?この病院の怪談話知ってる?アンタだれにきいた?ごにょごにょごにょ…。妙にギラギラした夕暮れがふたりを見下ろして、おぞましい展開を示唆。オムニバス作品のスタートとしては、強く興味をひくものでたいへんよろしい。
新米看護婦の初夜勤は肝試し。肩をこわばらせて怯える仕草が可愛かった。誰もいない病室からのナースコールを確認しにいくところは、演技も演出もよかったけれど、幽霊の姿かたちをスローで見せちゃうのは台無し。ベッドのしたに足が見切れるとか、はっと気付いたらカーテンだけが揺れてるとか、その程度の見せ方がいいのに。
病院から外には出ないのに、かなり大規模な超常現象ホラーになっていてビックリ。主人公の新米ナースが、夜の病院の廊下を怯えながら逃げていくとどんどん逃げ場がなくなって、袋小路のように地獄へと吸い込まれて行くような…。
単なる「病院の怪」のにとどまらず、日常からあの世までひとっ飛びだとばかりにギアをあげていくスペクタクルが展開し、普段我々が知覚できる領域をはるかに越えた世界のビヨンドをみせようとしているのが、映像化にあたっての脚色ポイントなのだと思う。最後には、嗜虐美のあるスプラッタ!オムニバスの開幕を飾るに相応しい、派手さのある作品だった。
モチーフとなっているのは、七三一部隊だろう。こんなことしてたら、恨まれても仕方ないって感覚は、平成から令和に元号が変わっても抜け落とさずに持っておきたい。