ふじこ

リチャード・ジュエルのふじこのネタバレレビュー・内容・結末

リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

アトランタの公園で起きた爆破テロ事件。
誰よりも仕事に熱心なリチャード・ジュエルがベンチの前に置かれた不審なリュックを警察に知らせ、結果多くの人の命が助かった。
一躍街のヒーローになったジュエルだけれど、冴えない風貌や融通の効かない言動、過去の逮捕歴等から爆弾を置いた容疑者としてFBIに、そこから漏れた情報を元にマスコミにも追い回される立場となってしまう。
実際に起こった話から。

有名な話なので名前と概要くらいは知っていたものの、改めて映像で観せられるととても辛く悲しい出来事。
日本で言うと、松本サリン事件で最初に通報したばっかりに容疑者にされてしまった河野さんが該当するだろうか。
正しい事をしたのに、誰にも信じて貰えずただただTV等で糾弾され、家に押し掛けられ、捜査官は罠に嵌めるが如く違法な捜査で追求してくる。
ジュエルに信じてくれる弁護士が居て良かった。

"イジメられる方にも原因はある"とか言うクソみたいな主張は大嫌いなのだけれど、まさにマスメディアはジュエルの風貌・生活から"孤独な中年のヒーロー願望"と決めつけてしまう。
そしてそんな主張は大嫌いなのに、彼の遵法精神や捜査官への憧れなのかとにかく愚直な様にいっそ腹が立ってしまいそうだった。彼は一つとして間違っていないのに、どうしてもっと悪くなってしまえないのか?と。
そんな自分にも少し嫌気が差すし、でも観ているのは正しいばかりでは追い詰められるばかりのジュエルだし。暗い気持ちになってしまう。

これを打ってて思い出したのは、女性へのAEDの使用率が男性に比べてかなり低い、ってヤツ。一体どこでこうなったのかは分からないけれど、訴訟騒ぎ(嘘)だの女性への使用は女性を呼ぶか居なければ放置する事に決めた会社(嘘)だの…何故か女性への使用を躊躇わせる一連の嘘。でもちゃんとした主張を聞いた訳じゃないけれど、乳を放り出すくらいなら死んでも良い(意訳)に近い話も見た事ある。乳過激派だ、恐ろしい。
結局、"マズい事になったら嫌だな"が前提にあって、それなら傍観者や無関心で居た方が良いって結論になってしまう。
ジェエルが終盤でFBIの捜査官に語っていた事が全てだと思う。

あの晩 僕が仕事をしたから生きてる人たちがいる
でも 次に警備員が不審な荷物を見つけたら――
その人は通報するだろうか
きっと こう思うはずだ
"ジュエルの二の舞はご免だ 逃げよう"
誰も安全じゃなくなる
[本編より引用]

ジュエルは最初から、事件が起きるよりも前からずっとこのスタンスだったはず。
"やらない善よりやる偽善"で良いと思う。でもきっとそうじゃないから、人はどんどん分断されて行っているんだろうなぁ。
ふじこ

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