ツクヨミ

雨月物語のツクヨミのレビュー・感想・評価

雨月物語(1953年製作の映画)
4.4
スコセッシフォロワーなら沼ること間違いなしな愛の怪談御伽話。
特集"大映4K映画祭"にて鑑賞、ゴダールが敬愛しスコセッシのベスト12にも入っている本作が劇場公開されるとのことで見に行ってみた。
50年代当事の邦画の中でも三大監督と呼ばれた黒澤.小津.溝口、その中で個人的に全然触れたことがなかった溝口健二監督、ヌーヴェルヴァーグとりわけゴダールが敬愛した監督なのでやはり鑑賞前は力が入る。そんな海外評価が高い溝口監督作の中でもけっこうなファンタジーというか御伽噺感が強いのがけっこうな肝なのかなと感じたが実際そうでもない気がした。
まあ本作は戦国時代を舞台にした欲と愛の物語だとシンプルに感じる、百姓から商人になろうと頑張り金を稼ぎたい兄となんとしてでも武将になりたい弟を起点にし栄枯盛衰なストーリーが展開していく。日本版ファムファタールな怪しい魅力な京マチコに魅せられまくり愛に狂っていく展開.手柄を奪い武将になるが嫁が苦しんでいると知り百姓に戻る栄枯盛衰仕様.どこからどう見てもスコセッシが好きそうな要素しかないと感じてしまう。まさにスコセッシフォロワーがニッコリしまくりなものしか無いんじゃないかと思うくらいスコセッシに影響与えまくりなんだなーと興味津々であった。
そしてやはりいろんな展開の中にあってもめちゃくちゃ惹きつけられる脚本力というか話運びも見事、クロスカッティングを多様し登場人物それぞれに焦点を当てたシークエンス繋ぎな編集もまたしかり。あとは田中絹代を筆頭に虐げられる女性たちの物語でもある力強さよ、こんなキツイ世界の中でも強く生きていくパワーが凄まじい。そしてなんといっても怪談話的な後半の異様なスリラー展開が美しくも恐ろしい、なんという御伽噺にして怪談話だろうか。
またぐるっと動きまくるカメラワークの妙で横移動が素晴らしい撮影よ、長回しの多様というのもあるが横移動ショットの活用はゴダールが"ウィークエンド"で真似したのがきっちりわかる素晴らしさを感じた。そして横移動ショットを上手いことディゾルブし幻想的な魅力を引き出す編集もまた良かった。これが世界の溝口健二かーと感じるよりも、やっぱりスコセッシの原点的な評価が先行する溝口健二初体験。
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