Monisan

雨月物語のMonisanのレビュー・感想・評価

雨月物語(1953年製作の映画)
4.1
観た。

難しいかと思っていたけど、意外と台詞で説明をしてくれるので観進められた。
勿論、映画なんだけど舞台を観ているかのような緊張感、芝居も撮影も編集もきちんと統率されているというか。
そうかワンシーン・ワンショットが多いという事もあるのか。背筋を正して観なきゃ、となる。

自身の瀬戸物を戦乱に乗じて高く売り捌きお金を得たい源十郎と、子どもと3人日々過ごせれば幸せと考える妻、宮木(田中絹代)。
一方、弟の藤兵衛は侍になって立身出世を夢見ている、妻の阿濱はそんな藤兵衛に呆れている。

柴田の兵隊は村を荒らすなか、琵琶湖を舟で渡り、町へと出る一向。宮木と子どもは途中で引き返す。
町のセット、美術が素晴らしい。本当に戦国時代の町はこんな感じだったのかも、と思わせてくれる。
瀬戸物は順調に売れ、手にした小金で藤兵衛は具足と槍を買い、妻とははぐれる。妻は侍達に犯され小銭を渡される。

源十郎は、高貴そうなお嬢様と乳母に大量に瀬戸物を買ってもらい、屋敷へ届けると上がるように言われる。
この屋敷の中の演出は音楽も相まって舞台そのもののような演出。
若狭(京マチ子)の所作も舞も本当に美しい。羅生門のキッと睨んだ姿とはまた違う。妖艶な可愛らしさもある魅力的な女。

藤兵衛は拾い首で褒美をもらい、家来を引き連れ遊郭へ。まさかの遊女になった妻との対面。妻は女の出世を果たしたんだ、と。これはきつい…

源十郎は、すっかり魅入られて、契りを交わしてしまう。挙げ句にピクニックに行き、天国だ…等と。まぁ仕方ないよね、あんな美女とお風呂一緒に入ったりしたらね。
町で高い着物を物色していると、着物屋に気持ち悪がられ、通りがかりの老僧に死相が出ていると。
身体に書かれたお守りでなんとか解き放たれるが、そこには屋敷跡しかない。この辺りは怪奇系の王道のような展開。

ここからが切ない。
源十郎は家に辿り着き、妻と子どもと幸せな再会を果たすが、翌日妻が殺されている事を知らされる。
藤兵衛夫妻は鎧を川へ捨て、妻の傷を抱えて再出発。
宮木の優しい見守るという声と、ろくろを回す源十郎、子ども。藤兵衛夫妻を写し映画は終わる。

足るを知る、って事だよね。
宮木は私が死ななきゃ気づかなかったのね、と言ってはいたけど。身の丈を理解する大切さかな。

冒頭に今の人々にはどう写るか、という言葉の投げかけがあった。この原作が書かれた時代、映画が作られた年代とも比べて、幸いにもだいぶ男女の平等も進んだんだと思うので。逆に阿呆な男に振り回される女、だけのお話では無くなってるかもな。
もっと普遍的な人間の欲、見栄、勘違いみたいな部分への教訓かと。

この登場人物みたいな男は今でも沢山いるけど、この耐え忍ぶ女というのは減ってきていて、欲まみれの人間が増えているのかも。今こそ、足るを知るでいたい。

溝口健二、監督
Monisan

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