Jun

雨月物語のJunのネタバレレビュー・内容・結末

雨月物語(1953年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

溝口健二による演出と早坂文雄によるスコアとが相俟って、作品全体に不思議な妖しさが漂う。カメラの長回しがもたらす画面の緊張感は同時に不気味さを宿している。観る人の解釈が及ぶ内容と物語の奥行きが素晴らしく、形は違えど共に浮気をしてしまった兄弟、源十郎と藤兵衛の対比が興味深い。出世欲に駆られた藤兵衛が、女郎に身を落とした妻・阿浜と再会することで自らの愚かさを知り、連れ立って郷里へ帰り改心したのに対し、若狭姫の死霊に魅せられた源十郎の場合、我に返り郷里へ帰ったとき、妻・宮木が落ち武者に殺害されたことを知らされる。何故藤兵衛の妻が無事で、源十郎の妻は亡くなってしまったのか。遊郭へ誘われても一度は断った藤兵衛の言葉が思い返され、最後の最後で妻の存在を意識下で手放してしまった差ではないかと私は考える。二組の夫婦が辿る物語は残酷でありながらも幽玄だ。
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