Sari

雨月物語のSariのレビュー・感想・評価

雨月物語(1953年製作の映画)
5.0
4Kデジタルリマスター版にて
日本の偉大なる巨匠・溝口健二監督の代表作。

大正11年(1922年)
戦乱が続く戦国時代の琵琶湖周辺の村。
焼き物で一儲けしようと妻子を村に待たせて町に出た男。武士になって出世しようと妻と村を出た男。2組の夫婦の物語。

溝口作品を観るのは3作目。
どの作品も人間描写がとても丁寧に描かれていたが、今作は女の情念や怨念が軸になっているので、女優さんの演技が素晴らしく其々に感情移入し最後まで夢中で観入ってしまった。
待つ女房を演じる田中絹代の声が上品で好き。台詞一言一言に重みがあってまるで聖母の様な存在感。
対してお姫様を演じる京マチ子の登場シーンは背筋が凍り夢にまで出そうな程の怪しい美しさが凄い。
武士に出世したい夫の女房役 水戸光子(迫真の演技と後の変わり様)が印象的。

京マチ子と森雅之 2人の画になること。
まるでおとぎ話の様な甘美な世界だが、その後戦国シーンと交差し夢と現実の境を行き来する不思議な感覚に…。
光と影の絶妙なカメラワーク。洋楽器と和楽器どちらも織り交ぜた音楽がより幻想的な世界を創り出している。
琵琶湖を船で渡るシーンや、霧がかった屋敷などホラー要素なシーン多々あるが、私は恋愛映画としての印象を強く持った。
愛と欲望ー。いつの時代にも共通する永遠のテーマ。
人は過ちを犯し、失ってようやく本当の愛に気づく事もあるものだ。
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