ぶみ

野球少女のぶみのレビュー・感想・評価

野球少女(2019年製作の映画)
3.0
あきらめない。何があっても。

チェ・ユンテ監督、脚本、イ・ジュヨン主演による実在の人物をモチーフとした韓国製作のドラマ。
天才野球少女と呼ばれてきた主人公が、高校卒業を控え、プロ野球選手になるという夢を叶えようとするが、女子という理由でテストさえ受けさせてもらえなかったものの、夢を諦めずに努力を続ける姿を描く。
主人公となる高校生スインをジュヨン、幼馴染でありプロとなったチームメート・ジョンホをクァク・ドンヨン、新任のコーチ・ジンテをイ・ジュニョク、スインの母をヨム・ヘランが演じているほか、ソン・ヨンギュ、チュ・ヘウン等が登場。
物語は、プロ野球選手になるという夢を諦めきれないスインが、様々な壁にぶち当たり、それを乗り越えていこうとする様が描かれるのだが、たまたま先日観た、ボクシングをベースとした瀬々敬久監督『春に散る』が、臨場感溢れる試合のシーンや、コテコテの演出であったのに対し、本作品は、映像としては比較的あっさり目。
そして、スインの前には、女子という性別を筆頭に、母や友人、監督と言った近しい人物からも夢を諦めるように言われと、様々な壁が立ちふさがる中、それでも懸命に夢に向かってひた走る姿に周りが変化していくという、スポーツを取り扱った作品の王道とも言える展開となっており、中でも、最も理解してやらなければいけない母親の反対が凄まじく、ヒールを一手に引き受けていたのが印象的。
ただ、本作品を私が若い頃に見ていたら、その母親を単に「ウザいなあ」と思っていたであろうところ、親となった今では、その表現方法の良し悪しはあれど、母親の言うことも決して否定できないと感じたところであり、親として、果たしてどう伝えればよいのか悩みどころ。
また、スインは最速134キロのボールを投げる設定であったことから、かつて阪急、オリックスの左のエースとして君臨した星野伸之が、最速130キロ前後の速球と70キロ台のスローカーブとのコンビネーションを武器に強打者を打ち取っていたのを思い出した次第。
前述のように、スポーツものとしては全体的に味付けが薄味ではあるものの、野球を通して夢に向かう姿は、誰もが応援したくなる内容であるとともに、韓国では1996年に女性もプロ野球選手になることができるようになったが、日本でも、1991年に「医学上男子でないものを認めない」としていたNPBの野球協約が改定されたところ、実際に女性が入団テストを受けたことを思い出した一作。

私の未来は、誰にもわからない。
ぶみ

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