slow

チャンシルさんには福が多いねのslowのレビュー・感想・評価

3.9
今日迄の日々はしっかりとわたしの受け皿となり、できるだけ調子に左右されない生き方ができるよう、わたしがわたしでいられるよう、静かに黙って、器としての役割を担っていてくれたのだな。今、割れてしまったそれを見つめるわたしの顔と、辺りに散乱したわたしの顔は、同じように頼りなく、今にも泣き出しそうだ。

女性監督の活躍がめざましい韓国映画界に、また新風が吹いている。冒頭から小津でにこり。そして、ホン・サンスとジャック・リヴェットを足したようなサラッフワッな作風。監督はホン・サンス映画のプロデューサーを長年務めてきたということで、劇中で同じくプロデューサーとして活躍するチャンシルさんは監督を投影させた人物なのだろうと思う。脇目も振らず映画にその人生を捧げて来たけれど、ある出来事をきっかけに、その人生の柱を失ってしまうチャンシルさん。自分が選んだ生き方は間違っていたのだろうか。何ともやり場のない気持ちを抱えた彼女に訪れる結末とは。派手さはなく劇的でもないけれど、これは女性でも男性でも共感できる物語だと思うし、生き方を見つめ直す、そうせざるを得なくなった…という主に30代以上の方なんかにはチクチクと刺さりじわりと染みる作品だろう。
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