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ひとつの太陽のchamのレビュー・感想・評価

ひとつの太陽(2019年製作の映画)
4.4
幼い頃から手がかかり問題を起こすたびに家族を悩ませてきた弟。
優秀な兄と比較され、弟は常にもがき苦しんで生きてきた。そんな弟を中心にした一家の葛藤の物語かと思いきや、穏やかで問題を起こさない兄が音もたてずに静かに物語をひっくり返していく。

弟にまとわりつく悲劇が繰り返されるなかで、周りから優秀に思われていた兄も常に挫折や葛藤を抱えていたのが思い返すと日常風景からもうかがえる。
家族は大きなものを失って、今まで見えずに過ごしてきたものをもう一度大切に拾い上げていく。
映画には出てこないけど、台湾には太陽はもともと二つ存在し、月は昔太陽だったという逸話があるらしい。人々が常に照らされ続けていることに疲れ、片方の太陽は月になったという。対照的なこの兄弟ももともとは2人ともこの一家の太陽だったのかな。二人いるはずの息子なのに、一人の息子としか向き合ってこれなかった父と母の物語のようにも思えた。

映像が素晴らしく、台湾の風景を映し出すコントラストが印象的。しかし、映像はものすごくきれいなのにどこか重苦しく、照らす太陽はずっとどんよりしている。
Netflix作品であることと相まって、果てしなく広がる美しい青空がスクリーンではなく四角い小さな箱に押し込められ窮屈な心情を映し出しているようにも見えた。(でもこの映像は映画館でも観たい!)
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