つるみん

ひとつの太陽のつるみんのレビュー・感想・評価

ひとつの太陽(2019年製作の映画)
3.8
【世界で一番公平なのは太陽だ】

次男アーフーが逮捕され、少年院へ。自動車教習所の教官である父アーウェンは、医大を目指す長男アーハオにしか期待を寄せず、アーフーの事は興味なし。母はどちらの息子にも同様の愛情を注いでおり、夫婦間に溝ができる…。

今年のアカデミー賞国際長編映画賞のショートリスト(ノミネート前の最終候補)に選出された一作なだけあって、濃厚なヒューマンドラマであった。世界共通して「あなたが母親なら?あなたが父親なら?」といった問いかけが効いたのだろう。

いきなりショッキングな映像から始まる本作。引き込ませ方としては◎。そこからジワリジワリと進んでいくストーリーは、非常に台湾らしい。しかし広大な自然を映すロングショットや少々曇った雰囲気を作り出すエフェクト等はどちらかというと香港映画に近いものを感じた。どちらにせよ、このストーリーに合った雰囲気作りは徹底しており、特に光と影の映し方は素晴らしい。

父親が妻に打ち明ける息子たちへの想い。あの丘の上でのワンシークエンスは、これまで長く、丁寧に描いてきたからこそ、強い意味をもたらす。

そしてラストに出てくる『陽光普照』という大きな文字と『A SUN』という小さな文字。改めて、『A SON(=息子)』のストーリーであったのだなと確信する。

156分という長尺で、少々長くも感じたが、エンドロールに入れば満足感で一杯になる。良い意味で非常に疲れる、そんな映画であった。
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