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夏時間のasaのレビュー・感想・評価

夏時間(2019年製作の映画)
3.8
人生をのぞき見るような作品。覗き見てる間に、まるで自分の過去だったかのような気持ちになる。オクジュに起こったことを自分が経験してきたわけじゃないのに、「そうだったな」と思うのはなんでだろう。

今の私はオクジュとお父さんの間くらいの歳なのかな。どっちでもない存在だから、どっちの気持ちもわかるような気がした。

この間までオクジュだった自分にとって、言葉にされていない部分までよくわかる気持ちがした。もちろんこれは私の心の中だけの話だけど。

とりとめもないことなのかもしれないけど、今の自分にはどうしようもなくつらくて「人生終わったな」って思っちゃう日々。それでも夜はくるし、生活は続く。自分の周りの人たちはまるで別の世界に生きているみたいで、私の苦しみをわかってくれる人はどこにもいないのかって絶望するような、だけどそうじゃない、大切な人たちだとも知っている。

オクジュとドンジュが2人でラーメンを食べるシーン。お父さんと叔母さんが老人ホームを探すシーン。
兄弟の姿が対比的に描かれたような気がして、私もいつかスルメを食べる側に行くのかなとぼんやり想像したりした。

色々な気持ちの間にいて、言葉にできない感じ。「嬉しい」「楽しい」「悲しい」、感情を表す単語は単なる指標にすぎない。生きる中で感じるものって、そんな曖昧なものばっかりだよね。きっとそれでいい。そんな日々が描き出されていたような映画だったと思う。
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