KnightsofOdessa

Family Romance, LLC(英題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Family Romance, LLC(英題)(2019年製作の映画)
2.0
[自分を自分たらしめるものとは?] 40点

"人間は別人になれるのか"という命題に対する一つの答えを探す旅のように見えるが、よくよく考えると(いやよく考えなくても)極東の国にある謎ビジネスを覗き見る観光映画って感じ。いきなり桜見ながらチャンバラ始めるあたりで一気に不穏になるが、会社の海外向けプロモビデオ的な感じはずっと最後まで続く。興味深かったのはマヒロのためにパントマイムするカメラマンを雇うシーンや、本筋と離れた永井すみれがカメラマンを雇って有名人っぽく振る舞うシーンで、定義上はそうなっていても映画のテーマ的に"実はパパラッチが永井すみれを雇っていて自らをパパラッチたらしめている"みたいな不思議な曖昧さを提示していることだろう。そうなれば、これら"シュレディンガーの猫"世界の中で、自分を自分たらしめるものが何であるかという定義(例えば主人公は仕事のためにマヒロを雇っているのかも知れない)が揺らぎ始めるのだ。

しかし、あくまでも映画は"ファミリーロマンス"の仕事風景を写すという出発地点から抜け出すことが出来ず、仕事に思い悩んだり振り回されたりする主人公を描写するに終止しているのは勿体ない。所謂"観測者"の世界まで到達するメタ的な展開があればもっと面白かったのかも知れない。

ヘルツォークが自らカメラを持ったらしく、新幹線の横で土下座するシーン(実にエキゾチックジャパンっぽい!)は40秒くらいの制限の中で急いで撮影したらしい。その他のシーンも申請をすっ飛ばして小型カメラを使ってゲリラ的に撮影されたものらしく、色々大変だったというエピソードは豊富みたいだが、正直だからなんだという感じで、裏話以外の面白みはない。
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