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Zombi Child(原題)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

Zombi Child(原題)(2019年製作の映画)
3.5
【ボネロかく語りき《退屈な学校生活もゾンビ映画にできるよね》】
第72回カンヌ国際映画祭ではジム・ジャームッシュが『デッド・ドント・ダイ』、ベルトラン・ボネロが『ZOMBIE CHILD』というゾンビ映画を出品したことで話題となった。前者の場合、『ツイン・ピークス』譲りのゆるいゾンビ映画の世界に皮肉を詰め込んだ傑作であった。さて後者はどうだろうか?ベルトラン・ボネロといえば初期作『戦争について』でカルト的動きによる同化を通じて死への渇望から生の願望を見出していくドラマを創り上げていた。今回の新作ではウェス・クレイヴンの『ゾンビ伝説』のルーツであるClairvius Narcisseの物語に基づくゾンビ映画でありながら、生と死の哲学が詰まった異色作でした。

1962年ハイチ、ゾンビはプランテーションでゾンビとして働かされていた。それから半世紀後のフランス名門校。女子高生は、先生の一方的な歴史の授業を退屈そうに聞いていた。アンニュイな彼女たちは群れをなし、退屈さを共有している。自撮りしたり、ランチに悪ふざけしたり、夜は灯りを囲んで怪談話をしたり量産型女子としての生活を楽しんでいる。確かに現代は、それなりに人種差別は減ってきているのであろう。少なくてもプランテーションで奴隷労働していた時代とは違う。黒人と白人は対等な位置で共存している。

しかし、現代にも姿形を変えたゾンビは存在しているとベルトラン・ボネロは語りたいようだ。

名門校のしきたりとして、礼儀の授業を受ける。画一的な動きをする少女たち、そこには個性がない。少し、群れから距離を置いている女子高生もいるのだが、結局クローン女子のママだ。ベルトラン・ボネロは『戦争について』で演出した身体表象によって人間をゾンビのように無個性にできることを思い出し、本作にも盛り込んでいる。正直、ホラー映画、ゾンビ映画というジャンル映画の撮り方は上手くない。恐怖を演出する劈くような音の入れ方が露骨すぎてムードだけの作品になっているのは間違い無いのだが、それでも無個性な少女ゾンビと奴隷ゾンビのマリアージュは珍味として美味しかった。

尚、女子高生の制服が可愛いので、制服フェチにオススメしたい作品である。
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