かずシネマ

羊飼いと風船のかずシネマのレビュー・感想・評価

羊飼いと風船(2019年製作の映画)
3.5
なんで折角遊んでる風船を割ってしまうん?と、お祖父ちゃんと同じ事を思ったけど。
風船が落ちていた場所と風船の形、そして「風船ではない」と言い切るお父ちゃんの様子にすぐ察する。
この後、作中でも説明あるけどな。
そら気まずいわなw

チベットのお葬式、ああいう感じなんやなぁ。普通に興味深い。
展開としては結構唐突やったけど。
あとチベットの文字が格好良い。

尼さん(奥さんの妹)と先生のあの空気感リアルーwと思った。
奥さんと女医さんの会話が好き。
やっぱり言いやすそうで、気安い雰囲気が出ていて。
当然やが。尼さんもお姉さんの前では妹やし、奥さんで母親も妹の前では姉やし。

この作品での主な問題は旦那よな。
この人、別に悪い人ではないし仕事も普通にしてる。
やけど、羊を放ったらかしで村の人と喧嘩して仕事が滅茶苦茶になったり。
仕方がないんだが、居てほしい時にこそ居なかったり。居なくていい時には居たりw

で、旦那は何よりも、家庭の経済状況、子供の人数と子供を育てる大人の人数、母体の心身の事、これらを見ないふりしているのがいけない。
ある程度大きなお兄ちゃんはともかく、まだ小さな息子2人の事すらぞんざいに扱ってしまうのも仕方がないくらいに手一杯なのに。
妊娠してしんどくて動けない時、産後に安静にしていないといけない時に、息子2人と新生児の面倒は誰が見るんや?
家の事は誰がやるんや?仕事の補助はどうするんや?
どうせ奥さんに無理をさせるのやろ?
そして、お金はどうするんや?

中国の「家族計画」による罰金も此処では重要でない。
高僧様の言葉を信じる事や保守的な事自体も悪い事じゃない。
子供をどうするにしろ、身体に負担がかかるのは女性の方だ…というのも此処ではあまり関係がない。
あの仕事内容であれば、家庭の事(家事育児)に参画できないのも正直仕方がないと思う。
で、何がアカンかって、先述した様に「問題点を見ないふり」なのがアカンのよ。
奥さんの体も大丈夫で、奥さんも納得していて、経済状況も大丈夫で、よっしゃハウスキーパーも雇っちゃるわ!俺はますます仕事を頑張るわ!くらいじゃないと、「転生がー高僧様の言葉がー」だけでは無理筋もいいとこよ。
捨て犬を拾って来て「自分が面倒を見るから!」と親を説得したのに結局面倒を見ない子供…みたいだったわ、旦那の言い訳は。
人間がきっちり管理して、子羊が増えても餌を与えてもらえる羊とは違うんやからな。

妹の場合は尼である前に「自分にはもう望めない事」やから、ああ言ったのも理解できる。姉さんを追い詰めかねない言葉だったし、ある種の無責任な言葉だったけど。理解は出来る。
まだ中学生くらいのお兄ちゃんの場合も、母ちゃんを追い詰めるなんて考えもしなかったと思うから理解できる。
こちらはチベット仏教だけど、敬虔なカトリック教徒も似た様な事があるのかもしれない。
確かこれ(旦那の言動)、ブロークバックマウンテンでも似た様な状況の場面があったわ。イラッとしたから覚えてる。

最後、何の解決にもなっていなく、それっぽい演出で煙に巻かれた感があった。
風船綺麗だったけども。
約束を思い出したという点に希望を見い出せばええんやろか。
それと、自分は酔いやすい方なので全編画面が結構揺れるのは少し気になった。
あと、先生…あんまり意味なかったな、と。旦那が際立っているから霞む。
夢見がちなロマンティストやったな。
この人は何をやってしまったんやろな。


バスの中で手遊び(みかんの花とかアルプス一万尺とかみたいな)をしている人がいた。チベットにもあるんやなぁ!と思った。
かずシネマ

かずシネマ