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ボンベイ・ローズのavantgardeのレビュー・感想・評価

ボンベイ・ローズ(2019年製作の映画)
4.2
衝撃的。
現代に生きる我々が忘れかけていた映画づくりへの「魂」が感じられる。
映像の美しさはもとより、まるで古き良き時代のヨーロッパ映画を観ているようで、すっかりタイムトリップの世界にハマってしまった。
インドという国に生きる人間特有の「あきらめ」の表情が人々に蔓延する空気と現実的なシーンが交錯する中、突如として現れる幻想的なイリュージョン。そこからインドの怪しい旋律と媚薬の香りが漂い観るもの心をふんわりと酔わせる。
宗教人種言語などなど、多様性の混在が実現するインドは、とても一言では語り尽くせないような国だ。そんな"chaos"感満載の中で生まれたこの恋物語は、まるでインドの象徴である蓮の花のように美しい存在として映る。そう、泥沼に咲く一輪の花のように。
最近は約束されていたかのようなハッピーエンドが定番の作品が多い。でもこの映画の終わり方には、辛辣さと優しさを同時に含ませたようなほろ苦いヒューマニズムがあると感じた。
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