せきもと

春江水暖~しゅんこうすいだんのせきもとのレビュー・感想・評価

4.9
カメラの無機的な中立性を保ってあくまで叙事的にとある家族と富春江の都市化を描いた中国映画
物語、画面ともに爆竹の煙や河にかかる霧に象徴されるルーズな繋がり/隔たりによって構成されている



無論、物語は作為的に存在しているが、家族の(原義的な)絆と個人、自由主義や都市開発といった乱雑さに焦点を当てた群像劇を無駄なく映し出しているという点でハイレベルな映画だと思う

ロングカットでカメラが流れながら撮影対象が入れ替わる演出は印象的
そこではエキストラや背景による視線の誘導にも意匠が凝らされている

初っ端から朝焼けが射して河に落ちる山の影と漁船の灯りの方向が揃っていたり、シーンのはじめにはっとするほど絵画的な月を覗き込む画を挟んだり、枝垂れる花から会話している人物を覗き込んだりとこだわりを感じるカットが随所に見られる。
上手さに痺れる。

自分の映画的な知識が不足しているからどれだけ素晴らしいのかわからないものの名作であることは確かだと思う。でも自信がないから4.9