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春江水暖~しゅんこうすいだんのらのレビュー・感想・評価

3.8
スケッチ的に描かれた群像劇と富陽の景観に見惚れているとあっという間の150分間。壮大なロングショットや絵巻物を彷彿とさせる横移動の長回しも迫力があって、大きなスクリーンで観てみたかった。巻二の公開を楽しみに待とう。

まるで中国の伝統的な山水画(特に「富春山居図」という水墨画にインスピレーションを受けているらしい)の世界に飛び込んだかのような映像世界の中で、再開発によって今まさに移りゆく街とその街で生きる家族のリアルな人間模様が描かれる。ビビッドに"人間"を描きつつも、そのドラマは常に雄大な自然世界と同じヒエラルキーで映し出されているように見えるところなど、非・人間中心主義的な東洋思想の趣を感じる。それどころか、滔々と流れる大河・富春江が("時間"のメタファーとして)全てを飲み込む圧倒的な存在感を放って、この映画の中心に位置していると言えるかもしれない。
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