MasaichiYaguchi

明日になれば〜アフガニスタン、女たちの決断〜のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.9
アフガニスタン映画機構の初の女性会長を務めるサハラ・カリミ監督がアフガニスタンの女優を起用して全編カブールで撮影した長編デビュー作では、3人の女性が登場してオムニバスドラマを繰り広げる。
義父母の面倒を見ながら家事に追われる孤独な妊婦のハヴァ、7年間浮気し続けた夫と離婚を決意するも、妊娠が発覚した高学歴のニュースキャスターのマリアム、妊娠したと同時に姿を消した恋人がいながら、いとこのプロポーズを受け入れた18歳の少女アイーシャという、年齢、生活環境、社会的背景が異なる彼女らが初めて直面する人生の試練を夫々描いていく。
映画の舞台であるアフガニスタンは、2021年8月、イスラム原理主義組織タリバンによって制圧されてタリバン政権下になっている。
それに伴い、女性権利の向上に取り組む“女性問題省”は廃止になってしまう。
タリバンの報道担当幹部は、女性の権利は「シャリア(イスラム法)の枠組みの中」で尊重されると発表したが、その真意は未だ明かされていない。
そのような伝統に縛られた社会の中で、主婦、キャリアウーマン、中産階級のティーンエイジャーである彼女らは家父長制社会に屈服せず、自らの意志で予め決められた人生へ抵抗する。
サハラ・カリミ監督は、何年も声を出すことが出来ずにいたが、意を決して運命を変える覚悟が出来た女性たちへ、本作を通してエールを送っている。