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劇場版「鬼滅の刃」無限列車編のshihoのレビュー・感想・評価

4.6
原作漫画愛読者です。アニメ放送は那田蜘蛛山編の総集編をおさらいのつもりで観た(19話泣いた)&他の話は試し見した程度。

ストーリーを知っていたので、アニメの続きだけれども最低限は設定変えたり上手に説明入れてまとめてあるなと思いました。

夜の闇の中を走る無限列車、照明が揺れる車内、雪景色など背景が三次元に近い絵でとても綺麗でした。音の表現(パキパキパキ、と鳴る鬼の体・炭治郎の耳飾りが揺れてカラカラ鳴る音・ガタンガタンという列車の車輪の音)も良く、リアルな空気感が感じられました。

やはり自分は原作でコマ送りでスラスラと読んでいた感覚があるので、台詞・動きひとつひとつに情念込めてゆっくりやられると少し退屈に感じる時間もありましたが、盛り上がる音楽も入りとても楽しめる内容だったと思います。
ギャグシーンでは「そんな動きするの?!」って思わず笑った場面も複数ありましたw

演出面で他に良かった!と思うところは魘夢の第二形態のボディのキモさ……。ぐにょぐにょ動く感じ、気合入ってましたね。芋虫が苦手な人は注意してください(笑)色つくと違うなぁ!列車内想像の10倍大変なことになってた…。骨、エグエグしかった。
猗窩座の使う技の魔法陣みたいのが奴の足から周りに広がっていく表現。
煉獄さん・猗窩座が技を繰り出す時の風の表現。
善逸と伊之助の夢の表現も振り切っててよかったかと(笑)善逸、戦闘外でも電気バッチバチで笑っちゃった。あとこの戦闘、伊之助の存在もめっちゃ大事だったんだなと思いました。


ただ、映画単体の作品として観た時に手放しで絶賛するほどのものか?と聞かれたら私としては「かなりいいんじゃない?」くらいの気持ちでした。
漫画作品の映画は、"どうせ本編と別筋で作られた映画用IFストーリーだから公式じゃない"という感覚が強くて一つも観たことがないので比較出来ないのが残念なのですが(例えばONE PIECEの本編総集編の映画とか観ていればまだ良かったのですが)、一つの映画作品として演出・構成・カメラワーク・音楽・声優の演技…とチェックして行った時に、自分の中のベスト映画達と比較するとさすがにちょっと劣るかなとは思います。
映画だから増し増し盛り盛りにしよう!という意気込みは充分わかるのですが過剰な部分もあるかなと。声優さん張りきりすぎてちょっとうるさいなとか(笑)あと逆に細かいところでここは原作の通りにしてほしかったのにな〜!という場面がいくつかありました。全体的に「動」が圧倒的に多かったのですが、だからこそもっと「静」でメリハリをつけてほしかった。原作はその一瞬を切り取った「静」の表現が大変巧みでもあります。

鬼滅がここまでの社会現象になっているのは色々な要因が重なってのことだと思います。
このまさに空前絶後のヒットぶりを観ていると「そこまでか?」と思ったり色々考察したくなるのも当然の心理です。
それについては(”その作品がヒットに比例して面白いか論争”は置いておいて)、間違いなく原作漫画の元々持つ魅力が全ての源だと私は思っています。いくら予算かけて演出盛り盛りにして大御所声優呼んだって中身が伴わなければ人の心は打てません。勿論「これだけ人が鬼に食われて行方不明になったり列車が脱線したりして警察や世間は一体なんだと思ってるんですか?炭治郎達鬼殺隊は事情聴取とかされないんですか?」とかのツッコミどころはありますけどね(鬼殺隊は政府非公認組織ですが、多分公的に存在を認められていないだけで政府は認知している&お館様の力で色々なんとかしているのだと思います)。
ストーリー・キャラクター・台詞・演出がずば抜けていいです。
原作の色合いは多少奇抜かなぁと思っていましたが、見事にアニメ映えするし女性ならではの色彩センスだなと感心しています。個人的には禰豆子の髪色はもう少し黒と橙色綺麗に混ぜられなかったもん?と思いますが(笑) アニメで見ても、「原作はこの流れの中で効果的なカメラワークを切り取ったんだね!」って思っちゃうくらいです。
そしてこの作品のおかげで、きっと日本の漫画原作のアニメ作品のクオリティが全体的に向上するでしょうし、ともすればガッツリ力の入れたバトルアニメーションがもっと映画で観られるようになるかも。あと本業の声優さんの力が再確認され、変な芸能人の声優起用が減るといいなって思いますw
今回のマイベストは伊之助の声優さん。上手い、話す速度がちょうどいい。バトルの時もカッコ良かったしラストシーンが素晴らしかった。
二番が魘夢の声優さんかな笑?
想像より高かったけどウットリした話し方が上手くて断末魔が凄くてよかったですw
勿論煉獄さん&猗窩座も二人とも想像より高くてちょっとうーんってなった笑 でも演技はとても良かったですよ。

前半の展開あってこその後半のバトルの畳み掛け、そしてラストに繋がりますよね。
特にラストシーンで煉獄さんが炭治郎に言った言葉は、何度読んでも心が奮えます。ここに「人生とは基本的に努力をしても報われません」という原作者の吾峠先生の厳しい価値観が良く出ていますね。
この映画は煉獄さんのエピソードを含んだストーリーそのものの良さが総合評価を爆上げしているのだと思います。
原作読者であっても、映画を観て煉獄杏寿郎をより一層好きになりました。


最後に、どうしても納得できないのが…
イントネーション!!
きょうじゅろう⤴︎なの?!
きょうじゅろう⤵︎じゃないの?!?!
炭治郎だって炭治郎⤵︎じゃん……
れんごく⤴︎きょうじゅろう⤵︎じゃないの泣?!
しまじろうだってしまじろう⤵︎じゃん!!
なんでなの……???
猗窩座が杏寿郎呼ぶ度にもう違和感凄くて……でもさすがに吾峠先生に確認してるよね……
伊之助⤴︎、善逸⤴︎も語尾下がると思ってた…。


※ネタバレコメ欄は
1つ目…原作と比較して気になった部分と声優さんについて
2つ目…煉獄さんについて(映画内までのストーリーネタバレあり)
3つ目…猗窩座について(映画以降の原作ストーリーネタバレあり)
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