マチ

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編のマチのレビュー・感想・評価

3.9
煉獄さんと猗窩座のシーンはグッときた。猗窩座の問いに答えることで引き出される煉獄さんの名言の数々。
時代設定は大正だけれど、神話のようだと思った。
旧約聖書の「人はパンのみにて生きるにあらず」みたいだと思った。

まさか三十代半ばにもなり、少年漫画原作の映画で泣いてしまうとは。
アニメ七話程度の予備知識しかなかったにもかかわらず、煉獄さんの一語一句には涙腺が破壊されてしまった。こっちがよもやよもやである。

鬼滅の話題になると「何をしようとしているか、何を思っているかを言葉にしないで、筋でわかるようにしてほしい」的なことをいう人は私の周りにもいるけど、説明台詞の多さの指摘については「全然気にしない派」である。

五十年前ころの魔球漫画のように「なぜあの球は消えるのか」を懸命に作中で証明するのと違い、どんな原理なのかさっぱりわからないまま、
「〇〇の呼吸 〇の型 〇〇」
と唱えれば、敵に何かしらの作用を与えるテンプレが採用されている世界線において、あえて状況描写ではなく台詞で進めてしまうのは、スピード感を損ねず、見せたいシーンを次々に展開できる。

大人の美意識で鑑賞すると引っかかるところがあるかもしれないけれど、子どもから年配の人までどの年代の人にも、おそらく日本語がわからない人にまでも誤解なく物語を届けられるものになっている。
表現の先端ではなく、三角形の底辺を支える表現方法を用いて傑作が作れたからこそ、多くの人に求められたのだと思う。
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