人間の争いの歴史における究極の原因でもある「疑心」、それに対する「他者を信じる勇気」をテーマにしています。
前段として、ペストみたいなものが世界を襲った時、多くの龍や人が石化し、シースーを含む龍の五兄弟姉妹が龍の石を作って世の中を救うのですが、なぜか一番落ちこぼれだったシースーだけが選ばれて石にならずに残され、他は石になってしまいます。
人間たちは世界を救った龍の石を巡って争ったことで世界が分裂します。
それから500年後に、ハートという国の長の娘ラーヤが他の国の長の娘を信じたことにより、自分たちの国で保存していた龍の石が割れてしまい、ペストが復活して父親が石化。ラーヤは生き残っているとされる龍（シースー）を捜し、最後には世界を一つにまとめる、というお話。
本作の特徴としては、敵が必ずしも敵で終わらないところが面白いですね。
また、ラーヤのアートがとてもよくできており、ビックリするぐらい魅力的に作り込まれています。表情が繊細。
観ながら感じたのですが、最近の実写「リトルマーメイド」と比べて、よほど物語としても面白いですし、画も優っている。
昔のDisneyアニメをベースにヘタな実写を作るより、もっとこういうオリジナルの作品を作って欲しいなぁと思いました。
アートについては「白雪姫」「シンデレラ」「眠れる森の美女」などのクラシックから中期の「美女と野獣」「アラジン」など手書きが好きで、日本であれほど売れた「アナと雪の女王」の画は正直なところ美しいとは思えませんでした。目がデカくて人形みたいで…。ですが、そこから時を経て本作になると少し趣が変わり、「アナ雪」と同じように手書きではないのですが、あらゆる方面で作り込みが素晴らしくて美しく感じました。
食事や染め物などの世界観はインドネシアなどアジアの雰囲気を持っており、様々な世界の要素が取り入れられているのを感じます。
ただ、シースーという龍のデザインは個人的には好きではなかったです。人間になった姿もどうにも…声が汚いから余計にそう思うのかもしれませんが。
これを愛嬌がある、愛せるキャラと感じる人たちもいると思うので、この辺りは完全に好みです。
でも素敵な話で素敵な世界観なのでオススメします。
