空海花

ブータン 山の教室の空海花のレビュー・感想・評価

ブータン 山の教室(2019年製作の映画)
3.9
幸せの国ブータンから耳に届く唄。
ブータンの新鋭、パオ・チョニン・ドルジ監督作。

標高4,800mの地にあるブータン北部の村ルナナ。人口はわずか56人。
ブータンの首都ティンプーに祖母と暮らす教師のウゲン(シェラップ・ドルジ)は
その仕事にあまり熱心なタイプではなく、歌手になってオーストラリアに行くことを夢見ている青年。
そんな彼が超山奥に赴任を命じられる。

その村へ向かうには1週間以上も、
山を越え谷を越え…途中からはテント泊という過酷な旅路。
やっと着いた村には電気も電波もない。
教室と思しき建物には黒板もなく、砂だらけ。
都会の若者なので即くじけそう。

でも村人は皆、彼をありがたく、温かく迎える。
電気はないが、彼の家だけ一応小型のソーラーパネルがあるようだ。
ほぼ機能しないのだけれど。
寒くないよう窓に高級紙を貼ったり…
子供たちもやっと来てくれた先生に興味津々!🤭
家の仕事も手伝うけれど、勉強もしたい!🙌

彼らは実際にルナナで暮らす人々。
映像はきめ細やかに、笑顔で暮らす彼らの生活を映し出す。
深い山々を超えたその丘は
空に近く楽園のようでもある絶景。

この子供たちの笑顔は何ものにもかえられない。
主要人物の一人ペムザムちゃんの可愛さと聡明さに心を掴まれる。
彼女たちもここに暮らす子供たちで
初めての一生懸命の演技に胸を打たれる。

ウゲン役のシェラップ・ドルジ
彼を案内するミチェン役のウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ
彼に民謡を教えるセデュ役ケルドン・ハモ・グルン
彼らはこの村出身ではないが、
ブータンで音楽活動をしていたり俳優を目指していて
いずれも俳優デビュー作。

物質的な豊かさの価値観。
まだここはモノが溢れてはいないが
モノには買える買えないが付いてくるから…

それは世界一幸せと言われる国。
足ることを知っている、心の豊かさ。
でも学校で勉強したくても、先生は滅多に来ない。
ウゲンも期間限定の派遣だ。

村人たちは
「先生は未来に触れることができる」
と尊敬の眼差しを送るけれど
その未来とは、あなたたち子供たちでもあるよ、と思った。

唄は世界のどこでも繋がる。
ウゲンが歌うのは
「ビューティフル・サンデー」🎸からの
「ヤクに捧げる歌」
ヤクのいる丘が心に広がる。


2021レビュー#107
2021鑑賞No.199/劇場鑑賞#15


こちらでは人気作です🙂
空海花

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