みかんぼうや

ブータン 山の教室のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

ブータン 山の教室(2019年製作の映画)
4.0
“世界一幸せな国”として有名なブータン。そのブータンの首都で育ち、教師の仕事に辟易していた若者ウゲンが、ブータンで一番僻地と言われる村に小学校教師として派遣される。

美しい大自然に囲まれたその生活と教育環境は、決して裕福とは言えない・・・いや、黒板もチョークもない、電気もまともに使えないという、我々の視点から見るとむしろ“貧困”という表現を思わず頭に思い浮かべる、あまりにも不便な環境。しかし、そこにいる子どもたちは“学校で学べる”という事実に目を輝かせ、村にたった一つしかないであろうオンボロの輪っかで玉入れをして日々を楽しむ。村長をはじめとした村人たちは伝統を大切にし、ヤク(牛の一種)を尊ぶ。そして、都会でふてくされていたウゲンを“先生”として敬い、ウゲン自身が教育者であることを自覚し、子どもたちや村人たちから多くのことを学ぶ。

一見“貧困”生活のように見えてしまったその村人たちの表情に暗さはなく、皆が優しく穏やかな表情をしている。

人が人に真摯に向き合いお互いを大切に思いやるその生活の中に、お金では買えない確かな“心の豊かさ”を垣間見た。人間が充実感や幸せを感じる瞬間のヒントが確かにこの映画の中にある。

そして、この純粋かつ温かい村人や子どもたちは、プロの俳優ではなく、実際にこの村に暮らす現地の人々であるという事実。彼らから醸し出される心地よいほどの温かみは、それが“リアル”だからこそ表現できるものなのか。

惜しむらくは、序盤の村までの移動の旅が私には若干冗長的で(その村が僻地であることと人の温かさを伝える意味では大切なパートなのだが)、より魅力的に感じた村に到着後の子どもたちや村人たちとウゲンとの交流をもっと観ていたかった。

最後にどうしても伝えたいのが、クラス委員のペムザムが本当にチャーミング!「チャンプ」のTJに引けを取らない、最強の子役・・・ではなく、彼女もまた現地に住んでいる村人の一人、つまり素人。なので、他の作品でお目にかかることはもう無いかもしれないが、彼女のなんとも純粋無垢な表情を見て、この子たちは素晴らしい教育を得て、より心豊かな人生を送って欲しいと親心のように願うのだった。
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