喜連川風連

今日もどこかで馬は生まれるの喜連川風連のレビュー・感想・評価

3.5
新年一発目劇場視聴映画。
経済動物競走馬の引退後の生活に迫るドキュメンタリー。

正確な数はわからないが、引退し、種牡馬や乗馬としての役目を終えた馬の8割の行方がわからないという。

加えて食肉として8000頭近い馬が殺処分されている。

劇中にもあったが、この事実だけを聞いて、馬だけかわいそうというのもおかしい。
だが、人間のエゴが動物を殺しているのは確か。
ただ、それは豚も牛も同じ。

そもそも現在の馬という生き物自体、人間のエゴによって品種改良され作られてきたものだ。

完全な野生の馬はもう世界で存在しない。

劇中、自分が関わった馬だけでも救おうとする人たちが出てくるが、それも罪滅ぼし・愛着といった人間のエゴでしかなく、どこにも正義は存在しない。

馬を生み出すのも人間。
馬を不幸せにするのも人間。
馬を幸せにできるのも人間。
どれだけの業を背負い我々は生きているのか。
その途方もなさに愕然とした。

劇場で泣いている人も見受けられたが、この映画を決して感動ポルノにしてはいけない。

ただただ、馬がそこに生まれ、馬主に買われ、調教され、賭けられる。
事実があるのみ。

そこに少しでも善意ある人が増えれば・・・そう祈るしかできない自分に無力さを覚えた。

馬の堆肥で新しい経済圏を作ろうとする人たち、大儲けしているJRAがなんとかしろ!糾弾する人たち、生産牧場の傍らで馬を引き取る人たち。

今日もまたどこかで馬は生まれる。
喜連川風連

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