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カーブルの孤児院のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

カーブルの孤児院(2019年製作の映画)
3.5
【アフガニスタン、インドとソ連に邂逅】
イスラム原理主義武装勢力タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧した。ガニ大統領が国外逃亡し、それに伴い多くのアフガニスタン市民が国外逃亡しようと輸送機に押し寄せている状況がニュースで流れている。今回紹介する『The Orphanage』監督であるShahrbanoo Sadatも現在国外脱出を試みている状態である。MUBIにて『The Orphanage』が配信されているので、今回感想を書いていきます。

1989年、カブール。映画館はインド映画で大賑わいだ。インドにおいて豪華絢爛な娯楽作品とは、現実逃避できる最大の娯楽だ。アフガニスタンもその伝統を引き継いでおり、連日多くの客が詰め掛け笑って楽しんでいる。主人公のQodrat(Qodratollah QADIRI)は映画館でダフ屋をやりながら逞しく生きていた。

そんな彼はある日、捕まって孤児院に入れられてしまう。そこから学園群像劇が始まる。この孤児院ではソ連と密接な関係があり、ロシア語の授業があったり、コンピュータのチェスゲームで良い成績を収めると先生まで褒めてくれる。また、アフガニスタンというと内戦で常に市民が貧困に苦しめられているイメージが強いが、この孤児院では制服があったり、民族衣装を来た出し物イベントがあったりと、まるでイギリスの寄宿舎もののような生活があるのだ。当然、食堂もあり子どもたちは十分な食事にありつける。

Shahrbanoo Sadatはそんな学園ものをジャンル横断的に描く。まず、登場人物が妄想する場面ではインド映画におけるミュージカルシーンにオマージュを捧げ、喧騒と閉塞感が包むアフガニスタンからの逃避を象徴的に描いている。

またなんといってもクライマックスが面白い。無数の敵に囲まれる中、わちゃわちゃと乱闘が繰り広げられるのだ。この乱闘シーンの面白さは、ジョン・フォード『静かなる男』のようにダイナミックながらも、各群れを魅力的に捉えているのだ。

Shahrbanoo Sadat監督は、もしアフガニスタンから脱出できたら今回の対バン政権による支配を映画にするそうだ。その時は全力で応援したいと思う。
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