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Share the PainのMoviePANDAのレビュー・感想・評価

Share the Pain(2019年製作の映画)
3.2
『 愛する為の通過儀礼 』

SP法 第一条:我が国の全ての男子は、はじめてのセックスの前に「性交人」と呼ばれる成人男性とセックスをしなければならない。そんな法律が当たり前に存在するどこかの日本。SPを受けたくない主人公は、彼女がプレイボーイの先輩に狙われていると知り、 決断を迫られる事になるのだが...

10代の頃に同性とのセックス(被挿入側)を経験したという中嶋監督。その際に感じた「痛み」や「支配される恐怖」などの被挿入側のリスクが、今作に登場する「SP法」の原点。「SP法」とは悪なのか、善なのか。「観た人それぞれのなかに、何かしら残すことが出来れば」と監督は言う。  

「カランコエの花」同様の自然体な演技が印象に残る有佐。劇中で見せる二度見の笑顔は、まさに青春のあの頃を回顧させる甘酸っぱさ。一方プロットは突飛な為、その制度の事を冷静に考え始めると突っ込みどころは満載。しかし、監督はそれを自覚の上あえてポイントを立たせるべくこう描いた様だし、主人公の短絡的な行動はその行為に直面する10代男子の行動にしっかり直結して見えた。だからこそ、相手を思いやり、やさしさと気遣いをもって臨まなければならないという説得力も生まれている。

「時を守り、場を清め、礼を正す。」

終盤、あえて目立つ様に映されるその言葉は決して大げさなものではない。愛するという想いの強さだけでは、相手を本当に思いやる事にはならないのだ。だからこそ、主人公への思いやりも感じられる幕の引き方は良かった。
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