葛西ロボ

still darkの葛西ロボのレビュー・感想・評価

still dark(2019年製作の映画)
3.7
盲目の主人公がナポリタンと向かい合う話。

40分という時間の中で、奇抜さや説明に頼らず、意図のある「見せ方」によってテーマを伝えようとしている点が、やや優等生的ではあるものの、信頼できる作り手であり、心地よい映像だと感じた。

作品としては“視覚障害者の生きる日常”という視点共有の要素を持ちながらも、そこにウェットな感傷は必要以上に持ち込まれない。
成熟していない現代社会からすると、多少非現実的に感じるくらいのフラットな描き方がされているといってもよい。

そして障害の実相よりも、その境遇を僻まずに挑戦する主人公と、それを取り巻く登場人物の「明るさ」や「厳しさ」にフォーカスされることで、この物語が最終的に「個」を描くことに専心していることがわかってくる。

その意味では盲目という要素自体がミスリードでもあり、作中を通して示されることが他人事ではなく、だんだん私事として感じられるような作りになっている。
何かを志す時の姿勢、良い意味での愚直さがまぶしくて、自らの弱い心を咎められるようだ。

主演監督の目力がとても強く、役者として活躍されているのも頷ける。