KnightsofOdessa

評決のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

評決(2019年製作の映画)
3.5
[事件から裁判までの一部始終] 70点

私の記憶が正しければ釜山映画祭でも上映していた気がする本作品。作品としてはDV夫を告発する過程を最初から最後まで描いた作品で、直近で観た『ジャスト6.5』に近いリアリズムと展開の速さが魅力の一つになっている。警察、婦女暴行対策室、役所、検察、弁護士、裁判官、など関わる公務員の種類も人数も多く、その誰もが自身の職務に忠実なのにDV夫は法で裁かれない手前まで話が運んでしまう恐ろしさが一つの主軸になっている。また、煩雑な書類作業と互いに代理(検察よ弁護士)を立ててキレイな言葉で罵り合う状況に怒りの熱も冷めた妻が、"現状から抜け出したいが、結局私たちはどこへ行くのか"という表情を浮かべながら漂っている様を観るのがもう一つの主軸だ。

ボコボコに殴られた妻と手錠を掛けられた夫は、なぜか同じ病院の同じ医師の診察を隣で受け、応急処置をしたまま一緒のタイミングで処方薬を買い、同じ車で大きい警察署まで移送される。こんな感じの"処置としては正しいが倫理的には間違っている"場面の連続で、法を守って懸命に仕事をしているはずの公務員たちが、実は人間を守れていないという矛盾すら指摘する。極めつけは"愛しているなら殴っても良い"と供述した夫に対して無罪判決を下そうとしていた最終版である。人殴って平然としてる夫も恐ろしいが、こっちのほうがもっと恐ろしい。映画的な解決は図られるが、もっとも薄気味悪いのは山積みになった訴訟のファイルに囲まれながら無罪の判決文を手書きで(しかも読む時はタイピングされた印刷物)書こうとする裁判官なのかもしれない。

国選弁護人ってやる気ないってイメージをよくつけられてて、金がかかる弁護士→払えないのでそのまま国選弁護人になって敗訴みたいな流れかと思いきや、しっかり戦っているところに好感を抱いた。こういうイメージ戦略は大事だと思う。
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